KINOの雑な映画鑑賞記録 

2024年の目標は見た映画の感想を一言でもいいから記録することです!

『トレーサー』1話視聴 あらすじ

韓国ドラマ『トレーサー』1話をU-NEXTで観た。

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2023年4月28日(金)からU-NEXT限定で配信が始まっていたらしい。

主演はボーイズバンド『ZE:A』のイム・シワン。

イム・シワンは『ミセン-未生-』や『他人は地獄だ』などのドラマで活躍しており、最近だと2023年1月6日に公開された『非常宣言』にも出演している。

私は『ミセン-未生-』はまだ視聴できていないのだが、『他人は地獄だ』を観てからイム・シワンが出ている作品には興味津々なのだ。

というわけで『トレーサー』の第1話を鑑賞した。

話は2017年から始まる。雪の降る寒そうな夜、どこか焦点の定まらない虚ろな表情の男性がどこかを見つめている。彼がファン・ドンジュ(イム・シワン)だ。

彼が立ち尽くすのは、事故現場で、彼の父であるファン・チョンミル(パク・ホサン)が車ごとガードレールを突き破り川へ転落した現場だった。ファン・ドンジュが幼いころ、父ファン・ヨンチョルはPQグループの常務として働いており、裏金やロビー活動の内部告発をしたが、裁判で敗訴した過去があった。「財閥の前では法は機能しない」ことを知った幼いドンジュ。大人になった彼は、大企業の不正な金を管理する資金管理を担当し、業界トップの会計士として働くようになるが、未だに権力に逆らった父親を理解できずに責め続けていた。しかし、父親の死をきっかけに会計士を辞め、国税庁の公務員になる。南州(ナムジュ)地方国税庁に配属されたドンジュは、瞬く間に業績を上げて、4年後の2021年に国税庁の本庁に配属されるが、そこは"ゴミ置き場"と呼ばれる国税庁租税5局だった。配属の前日に5局を下見するために訪れたドンジュ。

その頃、国税庁は、ドン証券のヤン会長に手を焼いていた。ヤン会長は、偽造社債の発行で3万人もの詐欺被害者がいるにもかかわらず口座残高が足りないという理由で支払いを拒否し続けてた。しかし、隠し口座の存在が国税庁に発覚してしまいそうになり、急いで隠し口座の金10億ウォンを自宅に隠していたところを張り込みしていた記者に見つかって、スクープになる。自宅に隠された10億ウォンを回収する仕事が5局に回ってくるが、ヤン会長は3局課長のチョン・ジョンイル(チョン・ベス)と繋がっており、見つからないところに10億ウォンを隠してしまっていた。

ヤン会長の自宅で10億ウォンを探す5局だが、見つからずに批判にさらされていると、ドンジュが現れる。2ヶ月前に離婚した妻の経費に、自宅の内装工事費用が入っているのを怪しんだドンジュの指示で家の壁を検査し直すと、急遽取り付けられたような怪しい柱を見つける。ドンジュが持っていた金槌で柱を叩き壊すと、見つからなかった10億ウォンが発見された。

若かりしイ・ビョンホンの熱と韓流ブームを感じられる:『甘い人生』

キム・ジウン監督の『甘い人生』(2005)をAmazonプライムで観た。

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ソウルの高級ホテルの総マネージャーを務めるキム・ソヌ(イ・ビョンホン)は裏社会を牛耳るカン社長(キム・ヨンチョル)から絶大な信頼を得ていた。カンには若い愛人ヒス(シン・ミナ)がおり、彼は彼女に別の男がいるのではないかと疑っていた。カンはソヌに自分が上海へ出張に行っている3日間の間に愛人のヒスの監視を依頼し、彼女が裏切っていればソヌが殺すか、自分に連絡するように命令する。命令通りヒスを監視するソヌは、次第に彼女の不思議な魅力に惹かれていく。ヒスと男の情事の現場を抑えるソヌだったが、ボスの命令に背き、事実を隠蔽する。しかし、そのことがボスにバレてしまい、命を狙われることになる...

 

冒頭部分の(上で載せた動画で確認できるが)閉店時間を過ぎているがなかなか帰らずに居座るゴロツキ3人に対して、イ・ビョンホン演じるソヌが「3つ数えるまでに出て行け」と忠告をする場面。当然ゴロツキたちは従うはずもないので、ソヌが暴力を振るうのだが、このアクションシーンはかなりスタイリッシュでよかった。

しかし、ラストの激しい銃撃戦に向けて同じボスの元で働きながら敵対しているムン・ソク(キム・レハ)や敵対する勢力のペク社長(ファン・ジョンミン)さらにはロシアの銃器密売団らが関わってくるあたりで話自体のまとまりがなくなってくる。そもそも、イ・ビョンホン演じるソヌがなぜここまでボスからひどい目に合わされなければいけないのかの理由づけだったり、ソヌとボスとの間の感情的な繋がりの強さなどの提示が弱いと感じてしまった。

アクションにおいてはスタイリッシュで観ていてとてもテンションが上がるのだが、脚本においては、説得力の弱い部分が結構目立っているように思った。

 

徹底してドライな潜入捜査もの:『ドラッグ・ウォー 毒戦』

ジョニー・トー監督の『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2012)をAmazonプライムで観た。

監督の50作目の作品である。

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物語は、麻薬製造工場の爆発事故から逃れた車が中華料理店に突っ込むところから始まる。麻薬ディーラーであり、香港人のテンミン(ルイス・クー)は搬送された病院で中国公安警察の麻薬捜査官、ジャン警部(スン・ホンレイ)によって逮捕される。中国刑法により、テンミンは死刑となるはずだったが、死刑を逃れるため、テンミンはジャン警部に捜査協力を願い出る。麻薬製造密売組織を取り締まるべく、ジャン警部とテンミン2人は組織に架空の取引を持ちかけるのだが...

 

潜入捜査官ものであり、テンミンとジャン警部という敵対する2人が捜査を通じて、互いに心を通わせ合うバディものになるかと思いきや、本作では2人の関係性は最後まで非常にドライなままである。そこには信頼や友情といった「情」は一切ない。

なぜ、テンミンがジャン警部に捜査協力するのかというと、死刑を逃れるためである。劇中、ジャン警部が拘束したテンミンに対して「50グラム以上の覚醒剤製造者は死刑」(中国刑法347法)だと告げることで捜査協力をするよう誘導する場面がある。中国の法律では違法薬物の密輸、販売、製造などを犯罪行為として厳しく処罰している一方、使用行為は犯罪としていない。

この香港人のテンミンという人物は、最も生に固執した人物として描かれていて、死刑を逃れるために、ジャン警部の捜査に協力するのだがが後に裏切ったり、しまいには生き残るためなら仲間さえも裏切るのだ。

本作は、ジョニー・トー監督としては初めて全編を中国大陸で撮影し、中国の公安を扱った作品である。そのため監督自身がインタビューでも明かしているように中国で厳しい審査を受ける必要があった。

 

「公安に関するストーリーに関しては、二つの審査を通らないとならない。まず公安の人が観てOKをもらう必要がある。公安に対して不正確なことを言っていないか。イメージを壊すようなことがないかをチェック。そういう事情があるので、今まで大陸で警察に関する映画は撮ってこなかった。」

http://www.cinemajournal.net/special/2014/drug_war/index.html

ここで、香港人のテンミンと中国公安警察のジャン警部との間に全く信頼関係が生まれないことや、「生きること」 に固執するテンミンの必死さには物語以上の中国と香港の関係が見えてくるような気がする。

これについてはこの記事を読むとより参考になる。↓

www.cinra.net

ちなみに、劇中の麻薬工場が作っている麻薬が袋詰めされるところが映るが、その麻薬が氷のような形をしているのでもしかしたら覚醒剤の仲間で見た目が氷に似ていると言われる「氷毒(エフェドリン)」を作っているのかなと思った。

 

夢の断片を辿る:ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ

ビー・ガン監督の『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ』(2018)をAmazonプライム観た。

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主人公のルオ・ホンウ(ホアン・ジエ)は父親の死をきっかけに12年ぶりに故郷である凱里(カイリ)に帰郷する。当時、主人公には白猫というあだ名の友人がいたのだが、マフィアに殺された過去があった。彼は友人を殺したマフィアのヅォ・ホンユエン(チェン・ヨンゾン)を見つけるため、彼の愛人、香港の女優の名を語るワン・チーウェン(タン・ウェイ)に近づくのだが、やがて2人は恋に落ちる。しかし、マフィアの愛人と一緒に居られるはずもなく、彼女は彼の前から姿を消してしまう。忘れられない彼女の面影を追って、主人公は現実と記憶と夢が交差する奇妙な旅に出る。

 

話自体はシンプルであるが、非常にミステリアスな映画だった。

観ながら思い出したのが、昨年公開されたパク・チャヌク監督の『別れる決心』である。ミテリアスな未亡人を演じていたタン・ウェイが印象的だったのだが、この作品もふてぶてしく、そしてつかみどころのないタン・ウェイの魅力が溢れている。

劇中では、鏡越しやガラス越しに登場人物を眺めることが多い。だから人物の顔がはっきり見えなかったり、ぼやけていたりするのだけど、多分これは主人公が過去の記憶や夢の断片を辿りながら、忘れられない女性を探す物語だからなのだと思う。

あと、この映画では泣いている人が何かしらの果物を食べている描写がある。

主人公の母親が昔、「人はすごく悲しい時、リンゴの実も種も1個丸ごと食べる」ということを息子に言っていて、その後出てくる登場人物もみんな悲しいときにはリンゴを食べている。ただ、映画館で映画を見ながら感動して泣いているワン・チーウェン(タン・ウェイ)はリンゴではなく、劇中で主人公とワンの間でよく話題になる柚子(ヨウズ)=ザボンブンタンを食べている。